
Aさんの収支計画は、賃貸併用住宅の建築です。
1階部分が自宅
2階と3階が賃貸部分の計画です。
しかし、賃貸需要の実態とかなり乖離しているように見え、合わせてキャッシュフローと利回りがあまりに小さく余裕がない、、、、。
これが、私の率直な感想でした。
Aさんの計画プランを見ると、
大手ハウスメーカーの想定する地域家賃相場に関して結構甘いような気がしました。
Aさんは、ハウスメーカーの提案を信じて実行に移せば、きっと厳しい現実を目の当たりにするだろうなと想像できました。
理由は、建物建築費が高いことに加え、ニーズに合った間取りとは言えず、加えて家賃設定が甘く見えたからです。
さらに家賃下落率の想定もかなり甘いと感じます。
我々のような事業者は、
自分たちの利益を上げたいのであれば、お客様利益を最優先し、お客様の人生をサポートする気構えが必要だと思います。
より安全を期すために、より厳しめでかための資金計画をするのが当然だと考えます。
なぜなら、計画が上振れすることは問題がないからです。
それが、高額商品(不動産)を扱う人の矜持であり、人として行うべき道だと思います。
提案を受けている施主になるAさんは、
サブリース(30年一括借り上げ)にそれほど明るくないようです。
だから、ハウスメーカーが30年間シミュレーションの通りに(間違っても多少の誤算の範囲で)保証してくれると信じています。
面談した際、シミュレーション内容についていくつか質問し確認すると意外な答えが返ってきました。
「う~ん、そこは詳しくわかりません、どうだったかな、、、。」
なかなか衝撃的なご意見でした。
ほんとにいいのだろうか、、、。
私は、本計画の利回りが低すぎるので、35年間びくびくしながらの投資になるのだろうなと感じます。
私がAさんだったら計画を変更し精査しなおします。
特に、当初想定の家賃設定で、30年間のサブリースが継続できるという前提や保証が無いことを知っておかないと、後からサブリース契約を解除したいと思っても後の祭りです。
借地借家法では、借主であるハウスメーカー(狼)を保護するので、貸し手である素人大家さん(羊)には厳しいという矛盾が生じます。
貸し手であるAさん(羊)からは、サブリース賃料が減額されて返済が厳しくなるとしても、Aさんから解除するには正当事由が必要であり、かなり厳しいものになります。
府中市●●町での計画
場所は東京都府中市●●町。
自宅を所有しているAさんのご自宅は、すでに建築してから40年ほど経過しているらしいので、このタイミングで建替えを検討しようと思ったようです。
どうせなら賃貸併用住宅にしようと考えたそうです。
賃貸収入もできるし、将来安定するだろうと思ったそうです。
実に良いアイデアであり、私も賛成です。
そこで大手なら安心だと思ったようで大手ハウスメーカーに相談したそうです。
大手ハウスメーカーの説明は、、、。
府中市内で不動産投資をするなら、
競争力で負けないように、他の物件と商品力で差別化を図りましょう。
当社は商品力が高いので、家賃の下落率はとても少ないです。
建ぺい率・容積率を最大限に使って目いっぱい大きな間取りを作り、
収益を最大化した建物を建てたほうが良いです。
借入額(建物代金)は年収の●●倍です。
35年のローン期間を設定し、途中で3回ほど年間手取りをすべて繰り上げ返済します。
サブリース(30年一括借り上げ)をしますから安心です。
家賃は相場の90%を保証します。
ラスト7年は、手取り額は赤字になります。
ーーー
周辺相場を鑑みると、想定家賃は高すぎるように見えました。
間取りも中途半端に広すぎて、期待する家賃がコンスタントにとれるとは思えません。
周辺が6~8.5万円の家賃相場に対し、対象物件の家賃想定は10~11万円程度を見込んでいます。
Aさんは、サブリース保証額に対してほぼ疑いを持っていません。
※資金計画書では、当初6年目までは家賃が変わらない計画で、7年目になって初めて2%の家賃が下がります。立地にもよりますが、年率1%の下落率が全国平均値というデータもありますから、本来想定する下落率は7%前後のマイナスです。
本計画では、築後15年でたったの6%しか家賃下落しないという計画です。(本来想定すべきは15%前後のマイナスです。)
私はすごい想定だなと感じずにはいられません。
サブリースは、家賃保証を相場の実態に合わせて、常に9割の保証をする内容になっています。
つまり、空室ができ募集家賃が厳しい状況となれば、当然賃料が下がる=サブリース料も下がるので、
アパートローンを利用されている場合、返済計画がうまく進まないことも想定しておくべきでしょう。
当初の計画書は確約ではないので、35年間、計画通りに保証されることはありません。
府中市を扱う不動産賃貸仲介のプロなら賃貸の地域相場は熟知されているかと思います。
私の言っていること、変じゃないですよね、、、(笑)。
驚くべき事実が、、、
Aさんの物件は駅から徒歩10分。
周りには商業施設はスーパー以外目立ったものはありません。
同等家賃を調べると、駅徒歩2分程度のところにありました。(==;)
そのほかでは8.5万円くらいが頭打ちで、
徒歩5分以上になると一気に大きく家賃が下落しています。
おおむね7~6.5万円です、、、。
知り合いの先輩業者さんからもヒアリングしましたが、
昨年、その地域の徒歩5分くらいの新築物件が決まらなくて、
建物完成後、全部屋の家賃を当初計画より1万円ほど下げ、敷金礼金ゼロゼロ、さらに広告料400%付け、やっと決まったんだって(笑)。
つまり、
大家さんは、
・仲介手数料100%
・広告料400% で募集したので、
5か月分の家賃相当額を支払って客付けしてもらったのと同義。
ここまでしなきゃ客付けができなかった物件(地域)って何よ???と思えます。
つまり、賃貸需要を鑑みると、この街(立地)そのものが魅力にやや欠ける、、、ということになります。
そこに、こだわりの物件を建築すれば、物件の魅力で集客できるのでしょうか?
募集家賃は、想定より早く減額していくことは予想できますので、
危ない橋を渡ることになるかもしれません。
不動産投資をする人は、通常出口戦略を想定します。
万一の際、売却して逃げるためであり、利益を確定するためです。
ところが、建築した瞬間に土地値(数千万円)は蒸発(赤字)するであろう計画になっています。
つまり、土地がタダで優位性があるにもかかわらず、儲からないシミュレーションなのです。
ハウスメーカーのために建築していると見えなくもありません。
そのくらい、私が賛成するには難色を示す計画に思えました。
だから、思わずリスクのことがメインの説明となってしまい、
私自身、Aさんの反対ばっかりしているような不本意な説明になってしまいました。
所要時間は、なんと4時間ちょっとです(笑)。
ちなみに。
賃料額とほぼ同じ支払額で、
この地域では、
新築一戸建て(土地所有権付)3LDKが
十分に購入できてしまうのですよ(==;)。
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(リスキー小話)
通期サブリースによる満室経営(1階は居宅利用)が前提ですが、
35年の返済計画の中で、年間手取り額「丸々繰り上げ返済」を3回(3年)する計画になっています。
にもかかわらずラスト7年目からは赤字経営です。
仮に1階部分を含め、全部賃貸に出したとしても、土地建物金額を考慮すると想定表面利回りで5%に届きません(土地がタダなのに)。
不動産投資をする人からすると、この計画は望ましい計画ではないことは多分理解してもらえるかと思います。
目的を明確にして、ブレてはいけない
賃貸は”経営”です!
賃貸は経営であるのだけど、
不労所得みたいな言葉に騙されてしまう人が多いような気がして残念です。
数億円の現金を持っているのであれば、将来の相続税圧縮のための資産運用という考えもありだけど、Aさんの計画を見る限りは違います。
新築ならサブリース契約はしないほうが確実に得です。
なぜなら、家賃設定が間違ってなければ通常に入居してくれるからです。
サブリース契約をしないことを想定して、
常に満室であっても月当たりの手残り金額はおそらく10万円いかない程度。 (1億円相当の融資を35年返済で計画しています。)
どうでしょう?
1億の借り入れをして年収120万円いかない、、、、。
(土地がタダなのに、、、。)
大手ハウスメーカーは、
高級な物件を建て、ブランドの差別化、競争力で勝つ!なんて言っているけども
それ、すべての地域で当てはまることじゃないと思います。
不動産は建物もさることながら立地がものをいうのです。
ハウスメーカーの「売るためのトーク」はいらないと思うよ。
ということで
万一、この契約を破棄したいという質問が出るかと思ったので、法律に明るい法律事務所に確認をしました。
もし、この契約を破棄したいと考えるなら、
計画が無謀であるということを根拠とする錯誤無効を主張する方法があるようです。もしくは多少の違約金を払う方法です。
私の素直な気持ちとして、Aさんに事業を始めてから後悔してほしくないのです。
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私は、多少の違約金がかかったとしても、この計画は中止したほうが賢明と思えました。
もしくは計画変更して再度計画をし直す必要があるように思いました。
なぜかというなら、年収に対して借り入れが多すぎるし、不測の事態が生じたら、ほかの資産を取り崩して、リスクヘッジをすることになる可能性を秘めていると思えたからです。
もちろん、計画通りのサブリースが最後まで続けば、首の皮一枚で継続できるわけですが、そのようにうまくいくとは到底想像ができません。キャッシュフローがあまりに少なすぎるのです。
決して無理をしてほしくないのです。
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