
お世話になったお父さん、お母さんには、元気で少しでも長生きしてもらって、仲の良い家族でいてほしいと思う方が多いのではないでしょうか。
さて、今日は認知症のお話しに関連したお話しです。
現在、65才を超えて認知症を発症している割合は7人に1人だそうです。
将来的には、5人に1人が発症するといった統計が出ているようです。
さらにびっくりしたのは認知症予備軍と認められる人は、65歳以上の方は80%にも上るそうです。
これはかなり、びっくりの数字で他人事ではありません。
認知症になると、預金が下せない?
今日の日経新聞の中にあった記事です。
Kさんのお母さんが認知症を患ってしまい6年前に成年後見制度の利用を始めました。
成年後見制度は、その強弱によって、「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれており、家庭裁判所はご子息K2を「補助人」にしました。
「補助」とは、家庭裁判所が一定の判断能力があると認定するもので、本来、本人が預金を引き出せるのですが、銀行の行員が成年後見人制度に詳しくなく、Kさん自身が引出しに行ったにもかかわらず断ったそうです。
おどろきです。
さらに、銀行が補助人用のカードを発行してくれないので、K2さんは仕事を休んで銀行へKさんの代わりにお金をおろしに行かなければならなかったそうです。
これは、困りますね。
第一生命経済研究所の試算では、認知症患者が保有する金融資産は2030年度には現在の1.5倍の200兆円に達すると予想。
横領を警戒する銀行は、認知症患者の口座を凍結してしまうそうです。
(銀行を守るために、預金者に不便をかけるなどは言語道断だと思いますね、、、。)
本来、高齢者の財産を守るための後見人制度は、使い勝手が悪く、いざという時に対処が難しかったりします。
不動産も売れない?
生活資金が底をつきそうなら自宅を売却し、賃貸に入ることで資金を確保できるケースも多いのですが、ところが所有している不動産も認知症になると売れません。
なぜなら。
法律行為に問題があるとなれば、履行した所有権移転が無効にできる事になるからです。
意思表示、意思確認ができない高齢者の資産(不動産や金融資産)が流動しなければ、お子さんが困るだけにとどまらず、本来事業や投資に回るはずの土地やお金も生かされず、日本の経済の重荷にもなるかもしれません。
そこで「信託」という制度を利用する。
そんなお話しです。
ちょっと、ややこしいかもしれませんが、理解すればとっても便利な制度だという事がわかります。
民事信託という制度
父(A)さんは、88才。
Aさんには、子(B)さん60歳の息子さんがいます。
Aさんが所有する賃貸アパートの家賃収入は月額30万円。
このお金が使えなくなると困るので、Aさんを委託者、Bさんを受託者として民事信託契約を締結し、築20年ほどの一軒家と定期預金、都内に所有するアパート数棟を信託財産としました。
Aさんに代わり、Bさんが家賃収入などの管理をしています。
「父が認知症になってからでは、施設に入居させたくても、アパートを売却できなければ、そのお金を準備できないかもしれない。」
そんな危機感も手伝い、一定の手間はかかるものの信託契約を結んだというわけです。
民事信託を拒む父
元気でアパートを自ら管理していた父はに相談を持ちかけた当初は当然嫌がりました。
「自分で全部できているのにそんなもの必要ない!」
そこで、息子さんは説明しました。
「財産はあくまでお父さんの物なんだけど、代わりに僕が賃貸管理をするだけなんだよ。」
資料を自ら作成して半年ほどかけて説得したそうです。
実際には、信託財産の所有権は息子さんに移るのですが、信託財産はお父さんのために活用することが前提であり、損をさせることは信託契約によりできません。
信託財産から生まれる利益と費用は全てお父さんのものになります。
所有権が移るのは、実質上、信託財産の処分、売買などを円滑にするためのものであり、息子さんはお父さんのために管理するのです。
将来、お父さんが認知症になってしまい判断能力がなくなってしまった時、お父さんが施設に入るための資金をねん出するために、息子さんの判断で不動産処分(売却)ができるのです。
このように子供に信託手続きをする親の行為は、「子供を想う親の行動である」とも言えませんか?
認知症・・・
本当に、他人事ではありませんね。
早めに対応をしておけば、後々家族のみんながお金の心配をせず、
楽ちんな気持ちで過ごせることになる可能性があります。
現状で何か気になるご家族がいれば、いつでもご相談ください。
提携の法律家と一緒にベストな方法を検討し対応いたします。
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